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時評:外国人と宇宙人

2024.3.1

日本代表

2023年の夏・秋は、バスケットボール、水泳、陸上、ラグビー、バレーボールなど数多くの世界大会が開催されました。たくさんの方もご覧になられたと思います。多くが日本代表として戦っているのですが、その日本代表と言う基準は、スポーツの種目ごとに異なります。

ラグビーWカップ、バスケットボール、サッカー、野球などを調べてみました。

当該国国籍

帰化(国籍を申請取得)

帰化後2年以上帰化する国に在住するか、帰化する前から2年以上帰化しようとする他国に在住

当該国の永住権を有する。

当該国で出生している

本人の親のどちらかが当該国の国籍を有する。

本人の親のどちらかが当該国で生まれた。

両親、祖父母のうち1人が、当該国で出生している

60ヶ月間継続して当該国を居住地としている

累積で10年間当該国に居住している

多くのスポーツがこういったところから、条件を作っているようです。血統主義と出生地主義というのがあります。出生地主義というのは両親の国籍に関係なく、生まれた国の国籍になるという考え方です。アメリカ、カナダ、ブラジルなどがそれにあたります。

血統主義は生まれた国に関係なく、両親との血縁関係により国籍が決まるという考え方です。日本はこの血統主義を採用している国であり、父母のどちらかが日本人であれば、生まれてくる子どもは日本国籍となります。またこの血統主義の中にも「父系優先血統主義」と「父母両系血統主義」にわかれます。

父系優先血統主義は父親の血統を優先するものです。、父親の国籍のみをその子どもが受け継ぎます。以前は日本や韓国も父系優先血統主義でしたが、現在は両国とも父母両系血統主義を採用しています。父系優先血統主義の国はインドネシア、スリランカ、イラク、イランなどがあります。過去は日本や韓国もそうでした。父母両系血統主義は両親のいずれかがその国の国籍であれば、子どももその国籍を取得するという考えかたです。父母優先血統主義の採用国は日本、韓国、中国、タイ、フィリピン、インド、ドイツ、フランスなどばあります。

母系優先血統主義を採用している国は無いようです。

植民地国でのワールドカップ出場を可能にしたり、多くの国が崩壊した時代に、新たな国で出場できるよう策定されたルールもたくさんあります。国籍の考えかただけでなく、そのスポーツが生まれた背景や様々な世界情勢や文化により国籍やスポーツの代表チームが決まっていくのです。

生まれも育ちもアメリカの日本人の田中さん、日本国籍を帰化申請し取得したアメリカの国籍を持っていたジョージさん、おじいさんが日本人で、国籍もイギリスでイギリス在住の、日本語は全く喋れない渡辺さんなど考えると「日本人」というのは何によって定義されるのか難しいところです。

想像の共同体

さて、ベネディクト・アンダーソンという社会学者が「想像の共同体」において

「〈国民〉という政治共同体は想像の産物であり,そこでは国家権力が領土全域にくまなく均等に作用した状態がイメージされていると定義する。その上で,ナショナリズムが18世紀ヨーロッパで生まれ,さらに各地に普及して今日の世界的な制度となる過程を考察する。小説や新聞からナショナリズムと時間観念の関係を解き明かしたこと,言語と〈出版資本主義〉の役割に注目したこと,行政的中心への役人の旅行を世俗的〈巡礼〉ととらえたこと,各地のナショナリズムは先行するそれの〈海賊版〉として作られると論じた。」https://kotobank.jp/word/想像の共同体-847981

とされています。

アンダーソンによれば「国家」や「国民」というものは古くから存在していたわけでないようです。中世では、世界は知っている人と知らない人によって分かれていたようです。近代になり国家という概念が生まれたと知らなくても、同じ国民同士という認識が存在し始めました。見ず知らずの人どうしを国民として認識でするのは「その人たちと共同体をともにしていると想像しているから」と言っています。このことを想像の共同体と呼びました。

なかなか解決したり明確な定義的な答えを導けるものではありません。常に考え続けていくべき問題です。

こういった時、デザイン、クリティカルデザインやスペキュラティブデザインでは、ムーンショットやアプローチを大きくしたり変化をつけたりしていきます。

考える練習をデザイン

日本の “国民体育大会参加資格” について見てみます。

同じ国の中ですが、各都道府県どこから出場するのかということに規定があります。

まず大本に

“前年または前々年度に他県から出場した者は,2 大会以上の期間を置かなければ当該県からの参加ができない。”とあります。毎年、あちこちの異なる都道府県から出場はできません。(例外)として、新卒業者,結婚·離婚等に係る者,ふるさと適用者,東日本大震災に係る参加資格 特例措置を活用者,JOC エリートアカデミー在籍者があります。

“1. 居住している現住所(生活実態と住民票が同じことが条件)の都道府県

2. 勤務地(勤務実態を伴う)の所在都道府県

3. 通学している学校(学校教育法第1条の該当校)の所在都道府県(少年種別のみ)

4. JOCエリートアカデミー在籍者は、卒業した小学校の所在都道府県(少年種別のみ)

5. 「ふるさと選手登録」ができる卒業小·中·高等学校の所在都道府県(成年選手のみ)

これらは、該当する年の4月30日以前から大会が終わる当日まで継続していることが必須です。また、前回に参加した都道府県と異なる都道府県から出場する場合には、原則2大会の間を置かねばなりません。”(https://media.japan-sports.or.jp/interview/28)

例外にもさまざまな細かい規定があるようですが、ざっくりいうと、出場できる県は生まれたところか、働いたり勉強しているところか、ふるさとかという思想になります。それでもこのルールの合間を見て「国体傭兵」と呼ばれる開催県の優勝のためにやとわれる選手も少なくありません。(図2)2 大会以上の期間を置かなければその県からの参加ができないとありますが、2 大会以上の期間を置かなければ当該県からの参加ができないとありますが、開催のおよそ10年前に開催地から意向が示され、5年前に内定、3年前に決定となるそうですので、「傭兵」が可能なしくみなってしまっています。

それはともかく、国体を見てもわかるように、出生地・ふるさと(血統・家・家系)・出身(学校・企業、所属先)など私達はさまざまな帰属をもって、自己を意識しているのです。

デザインではさらに極端なシチュエーションを妄想し、有り会えない環境を作り上げた上で、わたしたちの生活や道具やしくみがどうなるかを考えてげていく方法です。

ウルトラセブンと宇宙人

よく使われる題材ですが、ここでは「ウルトラセブン」を紹介したいとおもいます。ウルトラセブンは、特撮ドラマの名作と言われるものですが、現代にも通じる当時の世相や社会問題を表現しています。

「遊星間侵略戦争の激化によって地球が多くの宇宙人に狙われている」という設定のもと、敵対的な宇宙人に対する諜報戦が描かれ、当時の冷戦状況や高度経済成長期の問題など、世相強く表現されたました

第6話「ダーク・ゾーン」宇宙空間上の都市と地球との衝突という非常事態の中で、悪意のなかった宇宙人との共存の道を見出せなかったストーリー

第8話「狙われた街」単なる宇宙人の侵略にとどまらず、地球人同士のあやうく壊れやすい信頼関係を表現したストーリー

第11話「魔の山へ飛べ」老衰した宇宙人が自らの生命維持のために地球人の生命を盗み取るといった設定を通して、自己の生存のために他者を犠牲にするという不条理を描いたストーリ-

第16話「闇に光る目」地球から打ち上げられた惑星探査機を侵略兵器と考え地球に報復にきた宇宙人を表現。異なる民族・種族(宇宙と人)間の相互理解の困難さを描いたストーリー

第37話「盗まれたウルトラ・アイ」地地球で生きることを放棄した宇宙人の少女とモロボシ・ダン(ウルトラセブン)の価値観を対比させ、以下の有名なセリフが生まれた。「何故、他の星ででも生きようとしなかったんだ……僕だって同じ宇宙人じゃないか……」 

一見すると子供向けの昭和時代の1テレビ番組かもしれませんが、地球人と宇宙人のコミュニケーションを現代社会の構造として捉え直すとさらに様々な概念や知恵が見えてきます。

直接的に理解しづらい社会構造を少しずらしたり、アプローチを変えることで、より対話が進む場合もあるのです。

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