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時評:就労継続支援A型/B型

2024.3.1

みなさんは就労継続支援A型/B型という名前や看板をどこかで見られたことがあるのではないでしょうか。
障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)(図1)に基づく支援事業ですha
2022年に改正された障害者総合支援法は、2024年から施行されます。障害者総合支援法 の2022年改正ポイントは
1 希望する生活を安心して送れる支援体制の充実
2 障害者雇用を向上させる支援サービスの設立・体制強化
3 精神障害者が必要な治療・サービスを受けられる支援体制の整備
4 難病・小慢患者への医療充実と療養生活支援
5 関連サービスや病気のデータベースに関する規定を整備
6 その他(必要な仕組み作りや対象施設の追加など)
です。今回は特に、2番めの 障害者雇用を向上させる支援サービスの設立・体制強化

障害者総合支援法

障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスには、就労移行支援事業 (規則第6条の9)、就労継続支援A型事業 (規則第6条の10第1項)、就労継続支援B型事業 (規則第6条の10第2項)、就労定着支援事業 (規則第6条の10)があります。
移行支援(対象:通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる人)、継続支援A(対象:通常の事業所に雇用されることが困 難であり、雇用契約に基づく就労が可能である人)、継続支援B(対象:通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である人)、就労定着(対象:通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難 である人)などがあります。
それらは、身体障害・知的障害・精神障害・発達障害などの障害種別に関係なく、障害者が必要とするサービスを利用できるような仕組みです。
その中の「就労継続支援」とは、一般企業などで働くことが困難な方が、福祉的就労の中で障害や体調にあわせて働くサポートのことになります。前述した、雇用契約というのは「労働者が使用者(雇用主)のもとで労働に従事し、使用者はそれに対する賃金を労働者に支払う約束をする契約のこと」です。
雇用関係でない仕事というのは業務委託契約・請負契約・委任契約などとなります。詳細は割愛しますが、雇用契約というのは労働法上の保護を受けることが可能となります。逆に言うと
業務委託契約などの場合、委託されるのは法人や企業など「事業主」であるため、「労働者」としての保護を受けないということになります。そののようになっているのがA型、そうでないのがB型ということになります。


就労継続支援A型

就労継続支援A型とはさまざまなパターンが有るようですが、結果的に1日に4時間以上~6時間未満、週3~5日程度という事業所がほとんどでのようです。
対象者は
・特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、一般企業などでの雇用に結びつかなかった方
・就労移行支援事業所などの利用で就職活動を行ったが、一般企業などでの雇用に結びつかなかった方
・一般企業などでの就労経験がある方で、離職を経て現在は働いていない方
となっています。
当然、仕事内容は各事業所によって異なりますが、”パソコンによるデータ入力”、”カフェやレストランのホールスタッフ”、”小さなお土産品などのパッキングのような軽作業”、”車部品などの加工”などのようです。
就労継続支援A型では、雇用契約を結びますので最低賃金以上の給料が保障されます・
 
厚生労働省令和3年の資料では(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001155197.pdf )一人当たりの月額平均給料は「81,645円」となっています。時間給にすると「926円」です。
 雇用契約を結豚めに、雇用保険料や健康保険料などが差し引かれます。

就労継続支援B型は、障害のある人が一般企業などでの就職、また雇用契約に基づく就労が困難である場合に、雇用契約を結ばずに働くことができる障害福祉サービスです。
 
就労継続支援B型

就労継続支援B型は障害や体調にあわせて働き、就労経験やスキルの蓄積を図ります。福祉的就労というわれるものです。
例えば次のような方が例として挙げられます。
一般企業などでの就労経験があるが、年齢や体力の面で一般企業などでの雇用が困難となった方
50歳に達している方 もしくは、障害基礎年金1級を受給している方などになります。
”刺繍などの手工芸”、”部品加工”、”農作業”、”衣類のクリーニング”、”喫茶店での調理”、”パンやクッキーなどの製菓”、”封入作業” などです。
雇用契約を結んでいないので、賃金ではなく「工賃」として生産活動に対する対価が支払われるかたちです。工賃は、工作・加工の手間賃ですので、内相のようなもので何かを1つ作ったらそれに対していくらという形式ですので、賃金ではなく工賃は最低金額というのがありません。同様に厚生労働省の調査によると令和3年度の平均月額工賃は「16,507円」、時間給にすると「233円」となります。障害や体調に合わせられるとはいえ工賃はあまりにも低いものと言えるとおもいます。
また、就労継続支援事業所は、働く場所ではあるのですが、あくまで障害福祉サービスとして位置づけられています。ですので、障害のある方がそのサービスを利用しているので、障害者側に利用料が発生する立てつけです。
 
様々な根拠を持って作った法律であることはわかりますが、やはり、雇用や賃金、生産対価と工賃 という定義はあるにしろ、本当の支援には程遠いような気がします。いや、そもそも障害者の支援という考え方ではなくそれぞれにあった労働の提供という考えが必要なんだと思います。

久遠チョコレート

愛知県豊橋市に本店がある「久遠チョコレート」というチョコレート屋さんがあります。。世界のカカオを使った美味しいチョコと、おしゃれなデザインで大変な人気だそうです。年間売り上げは10億円で全国に工場と店舗は51拠点あり、全従業員約500人のうち、約300人は心や体に障がいがあるスタッフで、最近はシングルマザー、不登校経験者なども増え多様な人たちが働く場になっているそうです。
その社長である夏目浩次さんは、
温めれば、何度だってやり直せる チョコレートが変える「働く」と「稼ぐ」の未来
という書籍を出されます。
アマゾンのその書評には「世界各国のカカオや国内の様々な食材を組み合わせ、手作業で作られる色彩豊かなチョコレートが人気の「久遠チョコレート」。代表の夏目さんが「凸凹がある多様な人たちを誰一人取り残さず、かっこよく働ける場所を作りたい」という思いのもと、2014年、愛知県豊橋市で開業したこの店は、現在、北海道から鹿児島まで60の拠点を持つようになり、年商18憶円にまで成長。全国の企業や福祉事業所からビジネスに参画したいというオファーが殺到し、その問い合わせは、「ここで働きたい」という声も含めて年間1000件にも上る。たとえば俳優・松山ケンイチさんが手掛ける資源のアップサイクルブランド-momiji-とのコラボもその1つ。」とあります。

これから、労働力はどんどん減っていきます。これまで、だから女性の社会進出、高齢者の働き方、外国人労働力、障害者支援などの考え方から、色々な施策がありました。もちろんそのような考え方も大切ですが、支援や配慮と言った考え方だけでなく、それをどのように総合的にマネージメントしていくかも重要です。
一義的な働き方ではなくこれまでの枠組みで良かったのか、単なる否定ではなく新しい可能性をさまざまな人々と一緒に考えながら、働くことの意味や価値を共創的に考えていくことがもっともっと大切になった時代にもうだいぶ前にと突入しているのだと思います。

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