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時評:選挙と投票

2024.3.1

AKB

AKB48選抜総選挙を覚えていらっしゃいますでしょうか。2009年から2018年まで、日本のアイドルグループ・AKB48のシングルの選抜メンバーをファン投票によって決定していたイベントです。投票は、ファンクラブに入会するか、直前に発売されるシングルCDに入っている投票券を入手となっていたので、当時様々な報道があったことを覚えていらっしゃる方も多いと思います。
役割分担や並び方など不満があったため、ファンによる人気投票で選抜メンバーやセンターを決めるという発想から、選抜総選挙を開催するようになったそうです。このように、ファン投票でメンバーの人気を明確にしたのはAKB48が初めてだそうです。
対照グループも年によって変化がありましたが、 AKB48(秋葉原)、SKE48(名古屋 栄)、NMB48(大阪 難波)、HKT48(博多)、NGT48(新潟)、STU48(瀬戸内7県)、JKT48(インドネシア ジャカルタ)、SNH48(中国 上海)、BNK48(タイ バンコク)、TPE48(台湾 台北)が投票対象だったようです。こんなにもたくさんグループがあったのか今更驚きですが、「投票券」1枚が1票として、得票上位者から選ばれる選挙辞退はシンプルな仕組みです。

サンリオ

総選挙とはうたっていませんが「サンリオキャラクター大賞」というのがあります。1986年からありました。当初はハガキで応募するという素朴なものでしたが、2010年からインターネット投票も始まり、幅広く世の中に受け入れられていきました。一つの大きなメディアとなりました。投票方式は以下のように多様です。
①パソコン・スマホによるキャラクター一覧から投票
ネット投票は1つのキャラには1日1回のみ投票可能。つまり、違うキャラには複数投票可能。
②スマホによるなでる投票…画面上のキャラをなでる
スマホによる楽天からの投票
スマホは通常投票・なでる投票・楽天からの投票の3種類すべて行うことができる。
③いちご新聞での投票
いちご新聞5月に付いてくいる投票カードに記入して郵便投票。1枚のカードで最大5キャラまで投票可能。投票用紙に同じキャラを複数書いた場合は無効。
④店頭投票
サンリオショップで500円ごとにもらえる、投票チップを売り場に設置されている投票BOXに投票。
⑤グッズ購入投票
サンリオキャラクター大賞連動企画商品を購入すると1票入る。
コミュニケーションが多様で、投票権の投票者のコスト負担は比較的少なく、商品の販売とともに、このイベントを盛り上げる広報戦略として考えられている。

江戸時代

選挙・投票というのは、シンプルなようで、様々な仕組みやルールがあります。

江戸時代に選挙のうような仕組みがあったのはあまり知られていません。
日本の民主主義は「明治維新後、特に太平洋戦争後の占領期にアメリカにより確立」と考えられることがほとんどです。しかし、「江戸の民主主義」と言うものがあったそうです。
水本邦彦氏の『村 百姓たちの近世』(岩波新書、2015年)(図1)によると
「村掟の制定を始めとして、村の運営は村役人を中心に行われた。庄屋・年寄、あるいは名主・組頭などと名付けられる役職で構成される村役人の(中略)人選はおおむね村の意向に任された。(中略)村民の選挙によって選ぶ村も多かった」
とあります
長野県立歴史館の「信濃の風土と歴史④近世の信濃」(1998年)で、青木歳幸氏は次のように記しています。少し長いですが重要な所なので以下引用します。
「入札による村役人選挙は、江戸時代後期には信濃全域に広がり、戸主であれば女性にも選挙権がありました。 一八六三年(文久二)の佐久郡下海瀬村(佐久町)での名主と組頭の入札においても、「宗太夫後家」など二人が有権者名簿に登録されていました。 一八六〇年(安政七)長窪古町(長門町)の入札では、買収に応じた後家が記録されています。
しかし、入札による村役人の選挙は、明治のはじめに、区長・戸長の官選制により否定されました。婦人参政権が認められるようになるのは、自由民権運動や大エデモクラシー期の婦人運動をへて、 一九四六年(昭和二一)の総選挙の時からです。こうしてみると、女性戸主の村政への参加を認めていた江戸時代後期の村の文化と自治的な結合の高さに注目してよいでしょう。
江戸時代は、年貢納入や諸役などを村民が共同責任で負う「村請制」でLたから村の自治的結合は高かったのです。村の遊び日(休日)も村で決め、若者たちの要求によりしだいに増加しました。 一八一三年(文化一〇)
の桜沢村(中野市)では年間五一日もの休日がありました。祭りの日には若者たちが化粧して歌舞伎や人形芝居、花火や相撲興行などをおこなっていました。江戸後期には、地域での青年団運動や晨村演劇運動が現代よりも活発であったといえましょう。」
投票システムがあったことも驚きですが、女性の参政権に相当するものがあったことや若者の参加や休日のあり方を投票で決めていたなど大変興味深い民主的な制度です。

コンクラーベ

ローマ教皇選挙はコンクラーベ(根比べではありません ラテン語の「鍵のかかった」という意味だそうです)という制度で行われます。ローマ教皇を選ぶために歴史的にも何度も様々なルール・仕組みの変更が行われています。
詳細は割愛しますが、被選挙人・選挙人、その資格、投票方法、当選条件・得票数、投票場所・投票方法を常に考え続け、変化させてきているようです。つまりこれらが選挙の要素や要件ということになります。

エストニア

エストニアは、世界で初めてインターネット投票始めた国です。あらゆるシステムのオンライン化を進める国としても有名でセキュリティの設計も確実で、国民IDカードなどで本人認証し、投票内容もブロックチェーンの技術などを使っています。しかも、投票毎に新しく投票システムを構築しているそうです。システムのソースコードをオープンにして、誰でもアドバイスや指摘できるようにしています。ただ、若者の投票率がこのしくみでもさほど増加していないそうです。

オーストラリア

オーストラリアの選挙は、投票所の周りには、コーヒーやカップケーキなど、の出店がでるそうです。ソーセージを挟んだサンドイッチは有名で、美味しいソーセージがある投票所をまとめたウェブサイトもあるそうです。
オーストラリアは投票を義務にしているため、18歳以上の国民全員は必ず投票にいかなければなりません。投票しなかった場合は、違反通告を受け、正当な理由がない場合は、罰金が課せられます。また、義務としているため、投票しやすいようにたくさんの場所に投票所を作り、30ヶ国程度の言語で様々な案内をしたりなどもして投票率は、常に90%を超えているそうです。
オーストラリアの選挙では、このような義務やソーセージのことが多く言われますが、それよりももっと大切なことに投票用紙にあります。
すべての候補者に「優先順位」をつけて投票できるのです。また過半数得票の候補が出るまで、最下位の人に一番で投票した票を、二番めに投票された人に配分していくシステムです。死に票が少なくなるとてもいいシステムと言われています。当選させたくない人に、最下位の順位をつけておけば自分の票がその候補者に回ることがないからです。

ドメイン(デメーニ)投票

選挙権のない子供の親が、その子供の数だけの投票権を追加して付与する投票の概念としてドメイン(デメーニ)投票という理論もあります。余命投票といわれる投票者の年齢を加味した投票方式、若い人の一票が重くなるような仕組みなども理論として考えられています。これらは具体的に実施されたことはありませんが、包摂型社会を実現していくためには、選挙など、どうやって決めていくかを考えることも大変重要です

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