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時評:フロッピーとクマとブロッコリー  国が指定するというルール

2024.3.1

フロッピー 指定廃止

2024年1月に経済産業省は、記録媒体としてフロッピーディスク等を指定する規制等を見直すため、管轄の省令を改正したそうです。経済産業省の現行法では、様々な申請や届出の方法について、フロッピーディスク等の特定の記録媒体の”使用を定める規定”が数多く存在するそうです(https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1562602.html)。現状の文書作成等の規定でも、クラウドサービスの利用は解釈上可能だそうなんですが、具体的な対応ができていないそうで、現行の規定ではクラウドサービス等の利用の可否が必ずしも明確ではないという、事実に制度が追いついていない状況のようです。
他の省庁含めて、行政手続きの約1900条の許認可や届け出などの際にフロッピーなど電子記録媒体を指定しているとしています。今どきフロッピー・ディスクの”指定”を外すのは、当然のことですが、「これまで、なぜ変えられなかったのか」「今フロッピーはどのように保管しているのか」「なぜクラウドにできないのか」、、、だれもがおかしいと思っているけど、何故か変えられない、変えない理由を自ら作ってしまう”アビリーンのパラドックス”(図1)のようなものは行政の現場などでは多く発生しているように思います。

熊 指定管理鳥獣へ

クマによる被害数が過去最高となっているそうです。環境省のまとめでは、2023年度にクマの被害を受けた人は1月までで218人に達し、過去最悪だった2020年度の158人をすでに超えているそうです。そんな中、環境省が設置した専門家による検討会は、「クマを「指定管理鳥獣」に追加し、生息状況を適切にモニタリングした上で捕獲することを国が支援すべきだ」とする対策方針をしめしました。
「指定管理鳥獣」は、「鳥獣の保護及び管理」と「狩猟の適正化」を図ることを目的としている鳥獣保護管理法(図2)で、「全国的に生息数が著しく増加していたり、生活環境や農作物、それに生態系に被害を及ぼしたりする野生動物で、集中的かつ広域的に管理が必要な種が対象」とされていて、現在はニホンジカとイノシシが指定されています。
指定されると、捕獲や調査の費用やハンターらの人材育成などについて国が支援することになります。4月から、四国以外の地域でクマが指定されるそうです。ニホンジカとイノシシは農作物被害への対応のスタンスが大きいです。クマもその部分がありますが、人間が直接被害合うことが大きくその対応となります。
自然災害と同じで、人間社会が存在しているので、そこに自然の変化があると”災害”になります。クマも人間社会がなければ、被害や対立はないのですが、、、人間にとっても問題を解決するために国は”指定”するのです。

ブロッコリー 指定野菜

こちらも2024年2月に農林水産省は国民生活にとって重要性が増したとして、2026年度から“指定野菜”に加えることにしました。
野菜指定産地制度によって指定された、「国民生活上極めて重要な野菜」が指定野菜です。現在、葉茎菜類:キャベツ、ほうれん草、レタス、ネギ、玉ねぎ、白菜、
果菜類:きゅうり、ナス、トマト、ピーマン、
根菜類:大根、ニンジン、里芋、ジャガイモ(馬鈴薯)が指定されています。
またそれら野菜は、野菜指定産地と合わせて指定されており、指定状況は都道府県別・品目別特定産地数(令和5年4月1日現在)【特定野菜供給産地育成価格差補給事業】として、35種類 592の生産地が指定されています。
これは1966年にできた「野菜生産出荷安定法」にもとづいており、指定された野菜の種別や、その野菜を栽培する産地のことをいいます。種別は野菜の中でも特に消費量の多いものを、産地はその野菜を毎年作る規模の大きな産地を、国が指定しています。指定産地には、”指定野菜の出荷数量における2分の1以上を指定された消費地域に出荷する義務”がでます。しかし野菜は価格変動が激しく、作物の収量は天候の影響を大きく受けやすく、市場への供給量も変動するので出荷価格が一定以下に下落した場合は、補給交付金が支給される「野菜指定産地制度」もあります。都道府県別・種別別特定産地というのもあり、例えば”春キャベツ”、”夏秋キャベツ”、”冬キャベツ”など種類の他生産次期も指定してるものもあります。

「難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律」)」に基づく指定難病もあります。
指定難病は、1)発病の機構が明らかでなく、2)治療方法が確立していない、3)希少な疾患であって、4)長期の療養を必要とするもの、5)患者数が本邦において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないこと、6)客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が成立していること、しています。少ない患者さんであっても

「文化財保護法」に基づく指定文化財や国指定天然記念物、「国立公園法」に基づく国立公園指定、これらは文化財や景観の保護のためのものです

指定国立大学法人

「国立大学法人法」に基づく指定国立大学もあります。私の務める九州大学もその一つですが、「国立大学法人法の一部を改正する法律(平成28年法律第38号)により、我が国の大学における教育研究水準の著しい向上とイノベーション創出を図るため、文部科学大臣が世界最高水準の教育研究活動の展開が相当程度見込まれる国立大学法人を指定国立大学法人として指定することができることとするとともに、指定国立大学法人に関し、その研究成果を活用する事業者への出資、中期目標に関する特例について定めること」となっています。

「政令指定都市」も馴染みがあることばです
政令指定都市は、日本の地方自治法に基づき政令で指定された地方公共団体で、地方自治法で「政令で指定する人口五十万以上の市」と定義されています。法定人口が50万人以上で、なおかつ政令(「地方自治法第252条の19第1項の指定都市の指定に関する政令」)で指定された市のことです。事務権限の一部を都道府県から移譲されます。また、指定市を包括する県を「指定県」と呼びますが、これはあまり一般的には使われていません

他にも、、

他にも、、都道府県公安委員会が指定した暴力団(指定暴力団)の構成員が、一定の行為を行うことを禁止している、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団対策法)や指定宗教法人などもあります。
さらには司法警察職員等指定応急措置法、国際観光事業の助成に関する法律第、地方自治法 指定都市の指定に関する政令、保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する政令、高速自動車国道の路線を指定する政令、一般国道の指定区間を指定する政令、台風常襲地帯の指定基準に関する政令、指定都市又は中核市の指定があつた場合における必要な事項を定める政令、豪雪地帯の指定基準に関する政令、毒物及び劇物指定令、水系を指定する政令、一般国道の路線を指定する政令、人事管理官を置く機関を指定する政令、建築基準法 人口二十五万以上の市を指定する政令、周辺整備空港指定令、水源地域対策特別措置法 指定ダムを指定する政令、石油コンビナート等特別防災区域を指定する政令、麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令、激甚災害の指定及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令、環境基準に係る水域及び地域の指定の事務に関する政令、覚醒剤原料を指定する政令、海岸を指定する政令などもあります。

国は様々なものを「指定」

このように、国は様々なものを「指定」して、わたしたちの安全や経済、文化を維持しようとしています。しかしながら、フロッピーのように、いつのまにか方法が目的になってしまい、逆にマイナスの制限がでてしまう場合もあります。社会や時代に合わせて指定の内容も、考え続ける必要があります。

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