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時評:ユニバーサルデザインの7原則 とノーマライゼイションの8原理

2024.3.19

改めて皆さんに大変良く知られているユニバーサルデザインとノーマライゼイションについて見ていきます。

ユニバーサルデザインの7原則 

ユニバーサルデザインという言葉は、1980年代、アメリカのロナルド・メイスによって提唱されました。1960年代、ベトナム戦争など(それ以前の戦争でも)での退役軍人など、また様々な病気や事故でアメリカでは障害を持つ人が急増しました。
こういった人々が、どういった領域でも差別を受けないようにするため、また、不便さを取り除くため、自身も9歳のときポリオにかかり、その後は車いすを使用していた[車椅子を利用する障害者であったロナルド・メイスが、新たに提言した概念が「ユニバーサルデザイン」でした。ユニバーサルデザインとは、すべての人にとって、できる限り利用可能であるように、製品、建物、環境をデザインすることであり、個別対応の設計変更や特別な仕様が必要なものであってはならないという考え方です。
またユニバーサルデザインがここまで広く受け入れられたのは、ユニバーサルデザインの7原則をしめし、具体的に理解されたからであると思います。

ユニバーサルデザイン7原則は以下のものから構成されています。有名ではありますが、一つづつ見ていきます
原則1:公平性 a. 誰もが同じ方法で使えるか、別の方法もつかい公平にする/b. 差別感や屈辱感をもたせない/c. プライバシーに配慮し、安心感や安全性を得られること/d. 魅力を感じさせること

原則2:柔軟性 a. 使い方を選べる/b. 右利き・左利きのどちらでも使える/c. 正確な操作がしやすい/d. 使いやすいスペースに合わせられる

原則3:単純性 a. 複雑にしない/b.直感的に使える/c. 誰にでもわかる言葉や説明/d. 重要度を示す/e. ガイダンスやアドバイスの効果的な提供


原則4: 情報理解性 a. 図記号や文字、触覚など複数の方法を用いる/b. 重要な情報を強調する/c. 情報を区別して説明する/d. 視覚・聴覚に障害のある人の利用方法や道具でも情報が伝わるようにする


原則5:安全性 a.隔離したり覆ったりする配慮/b. 危険な行動やミスに警告を出す/c. 間違った場合でも安全なようにする/d. 注意が必要な操作を意図せず行わないようにする


原則6:省体力性 a. 自然な姿勢で使える/b. 力を入れずに使える/c. 繰り返しの動作を少なくする/d. 無理な負担が持続的にかからないようにする

原則7: 空間確保性 a.高さに関係なく見える/b. 高さに関係なく手が届く/c. 手や握りの大きさに対応する/d. 補助具や介助者のためのスペースを確保する/d.補助具や介助者のためのスペースを十分に確保する。

これらのユニバーサルデザイン7原則は、誰にでも利用可能なデザインという視点を中心にしています。もちろんこの原則やその要件をただ満たせばユニバーサルデザインがなりたつというものでもありません。
この7原則は社会に向けて、福祉や障害に対するデザインをわかりやすく具体的に示し、次の方法や議論を生んだことに大きな功績があると思います

ノーマライゼーションの8原理

ユニバーサルデザインの7原則と比べてあまりしられていないのが、ノーマライゼーションの8原理です。ノーマライゼーションはデンマークの知的障害者の親の会の運動から生まれました。デンマークの社会運動家であったバンク・ミケルセンは、たくさんの知的障害者が収容されている大型施設の生活環境が、まるでナチスの強制収容所のように感じたそうです。そこから、障害者たちも障害を持たない人たちと同じように自由に生活できるようにするべきだ考え、「ノーマライゼーション」は始まりました。デンマークで始まったノーマライゼーションの流れは、1960年代にスウェーデンにも広がっていきました。
デンマークのバンク・ミケルセンが生みだした”ノーマライゼーション”は、スウェーデンンのべクト・ニィリエのよって広がっていきました
そのベンクト・ニィリエが提唱した「ノーマライゼーションの8原理」(図2)を見ていきます。
障害者であっても、住居や教育、労働環境、余暇の過ごし方など、日常生活の条件をできる限り、障害のない人と同じような条件にすることを目的とし、提唱されたものを”https://kaigoplus.com/column/36″から見ていきます。

①一日のノーマルなリズム
たとえ重い障害があっても、朝、目が覚めて、顔を洗って、着替えて、家から学校や職場へ行く。ずっと家にいるだけではなく、普通の人と同じように社会に属し、その日、1日をどう過ごすかを考える。ベッドではなく、ちゃんと食卓で食事をする。スプーンだけを使うのではなく、お箸やフォーク、ナイフなども、ちゃんと使う。介護職員の都合などで、夕方のお早い時間に夕食を済ませない。夜には、その日やり遂げたことを振り返る。一日は単調な同じことを繰り返す24時間ではない。

②一週間のノーマルなリズム
週5日、自宅から学校や職場に行く。もちろん他の場所にも遊びに行く。週末には仲間との楽しい集まりもある。

③一年間のノーマルなリズム
普通の人と同じように、長期のお休みもある。
それによって日々に変化が出る。
季節によってさまざまな食事をし、仕事も変化があり、行事も楽しむ。
スポーツや旅行など、余暇の活動も楽しむ。

④ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験
幼少期は夏はキャンプに参加する。青年期には服装や髪型にこだわりを持ち、おしゃれを楽しむ。音楽や異性との交流も普通の人のように興味を持つ。成人したら、仕事を通して責任も負う。老年期はそれまでに積み上げた思い出に浸り、経験から生まれた知恵にあふれる。

⑤ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
普通の人と同じように自由と希望を持って生きる。周囲の人もそれを認め、障害を持つ人を尊重する。大人であれば、自分が望む地域に住み、自らに適した仕事を自分で見つけて決める。趣味にも時間を費やし、楽しむ。

⑥ノーマルな性的関係
子供であっても大人であっても、異性との良い関係を築く。
青年期は異性との交際に興味を持ち、恋に落ち、人を愛し、愛され、成人して適した年齢を迎えれば結婚を考える。

⑦ノーマルな経済水準とそれを得る権利
障害の有無にかかわらず、誰もが基本的な公的財政援助を受けられる。そして、そのための責任を全うする。
児童手当、老齢年金、最低賃金基準法などの社会的保障を受け、経済的安定を図り、自分で自由に使えるお金があり、必要なものや欲しいものを購入できる。

⑧ノーマルな環境形態と水準
障害があるからといって、大規模な障害者施設に住む必要はない。それは社会から孤立することに繋がるため、普通の人と同じように、望む地域で望む家に住み、地域の人達と交流しする。

ノーマライゼーションは時に、障害を抱えている人たちを健常者と同じようにして、できるだけ普通(ノーマル)の生活ができるようにサポートするという考えではありません。障害者たちも障害を持たない人たちと同じように自由に生活できるようにするべきだ考え方です。健常者は無意識にバイアスを持ち、「普通の生活ができない、サポートが必要だ」と考えてしまうことがあります・これは障害がある人たちの権利を奪い、人権を侵害してしまうことさえあります。
これは障害だけではなく、病気や加齢、ジェンダーに関わることにも言えるかもしれません。
原則とは一般の現象に共通な法則。 特別の例外が起こり得ることを念頭において、一般に適用されるものとする基本的な考え方です(https://kotobank.jpより)とあります。物事をより良く勧めていくために、共通の事項を決めておかないといけませんが、例外が起こり得たり、様々な展開の可能性を残しているのが原則です。

原理・原則

原理とは、 事物・事象が依拠する根本法則。哲学で、他のものを規定するが、それ自身は他に依存しない根本的、根源的なもの。https://kotobank.jpより)とあります。何人も影響されべきでない確固とした考え方になります。

ですので概念としては、ノーマライゼーションのほうが大きくまた時代的に見ても先になります。ユニバーサルデザインはその一つを具体的なデザインの概念に落とし込んだことは重要であると考えられます。

いっぽうで「原理」や「原則」を具体的に示されると私達はわかったような気になります。なぜその「原理」や「原則」を示そうとしたのか。その背景にある考え方や事実はなにか、様々な方向性で見ていくことが、より深い社会包摂デザインにつながっていくとおもいます。

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