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07 誰も悪くないんです。だから、みんなでなんとかしないと。

2022.11.15

11月17日 世界早産児デー

国際デーをご存知でしょうか。多くの方が「世界〇〇デー」や「国際〇〇の日」というのをニュースなどで目に耳にされたことがあると思います。国際機関(国連総会、国連経済社会理事会、国際連合教育科学文化機関、世界保健機関など様々)によって定められた記念日で、「特定の事項に対して特に重点的問題解決」を、国連をはじめ全世界の団体・個人に呼びかけるための日です。
国際週間も含めれば約170も制定されています。都度、世界各地で様々な記念行事が行われています。環境や経済、文化に関するもの、また紛争や戦争への戒めなどの日もたくさんありますが、社会包摂に関わるであろうと言えるものをあげてみます。

  • 1月4日 世界点字デー
  • 2月6日 女性器切除の根絶のための国際デー
  • 3月1日 エイズ差別ゼロの日
  • 3月8日 国際女性デー
  • 3月21日 世界ダウン症の日
  • 3月31日 国際トランスジェンダー認知の日
  • 4月2日 世界自閉症啓発デー
  • 5月7日 国際助産師の日
  • 5月12日 国際ナースデー
  • 5月21日 対話と発展のための世界文化多様性デー
  • 6月4日 侵略による罪のない幼児犠牲者の国際デー
  • 6月12日 児童労働反対世界デー
  • 6月20日 世界難民の日
  • 6月26日 拷問の犠牲者を支援する国際デー
  • 8月19日 世界人道デー
  • 9月8日 国際識字デー
  • 9月28日 情報へのユニバーサル・アクセスのための国際デー
  • 10月1日 国際高齢者デー
  • 10月10日 世界メンタルヘルスデー
  • 10月16日 世界脊椎デー
  • 11月16日 国際寛容デー
  • 11月17日 世界早産児デー
  • 11月20日 世界の子どもの日
  • 12月3日 国際障害者デー
  • 12月10日 人権デー
  • 12月18日 国際移民デー

様々なアプローチがありますが、人権とはひとりひとりが人間らしく生活すること、すなわち ”個人の尊厳” のことで、基本的人権は自由権・参政権・社会権・受益権におおよそ分類されています。基本的人権が無制限に認められているわけでもなく、公共の福祉との関係も重要です。また、人権関係の国際デーの種類は、同和問題、女性の人権、子どもの人権、高齢者の人権、障がい者の人権、外国人の人権(他者の理解)などに分けられます。いわゆる啓蒙運動になりますが、世界規模ですので一定の役割を果たしているように思います。

ジェシカ・ハンフリーズ、ロナ・アンブローズ(著)、シモーネ・シン(イラスト)『世界じゅうの女の子のための日――国際ガールズ・デーの本』国際NGOプラン・インターナショナル訳, 大月書店

低出生体重児

その中で、11月17日は世界早産児デーです。

低出生体重児(ていしゅっしょうたいじゅうじ)(日本大百科全書(ニッポニカ)より)
「出生体重が2500g未満の新生児のことを指します。生まれるまでの妊娠期間は関係ない定義で、何らかの理由で出産が早まり、早産(22週目以降37週未満)で生まれた場合や、妊娠期間が37週以上で発育が抑制されると低出生体重児となります。
<出生体重区分>
・出生時の体重が2500g未満の赤ちゃん:低出生体重児
・出生時の体重が1500g未満の赤ちゃん:極低出生体重児
・出生時の体重が1000g未満の赤ちゃん:超低出生体重児
周産期医療の発達により、2500g以下で生まれた赤ちゃんの多くが、いわゆる正期産の3000g程度で生まれた赤ちゃんと同じように育ちます。また、昨今では医療技術の格段の進展によって500g程度で生まれた赤ちゃんも育つようになっています。
(周産期:母親からみれば分娩、新生児からみれば出生の周辺期を意味し、医学的にも医療上でも、母体および胎児・新生児の二つの生命を対象として、分娩と出生という人生においてもっとも劇的であり、かつ危険に満ちた時期である。)」

当事者以外はあまり気に止めない「低出生体重児」について、NHKで短い報道がありました。NHK松山放送局の「その命守る。見つめる。」です。低出生体重児とその親を支援する仕組みや活動の報道です。
親には、低出生体重児を産むことの不安や負担、また小さく産んでしまったことで自分を責めるなど、大きな、また様々な不安があります。そのような方々が写真とことばで表現する活動、そしてその同じ境遇の方々のコミュニケーションのあり方やその重要性を伝えてくれています。
取材では「自分がこんな小さい子を産むなんていうのは、妊娠期間中、思ってもみなかった」「小さく生まれる子たちもいるけど、こうやって大きく成長する」「保育器の前で自分の子供の姿を見たときには、やっぱりショックだし、こんなにちっちゃく産んだんだって、自分を責めたりとかはしました。」「今日もきっとNICU(新生児集中治療室)で頑張っている赤ちゃんいるんだなと思う」などの発言が聞かれています。個人で苦しむのではなく、社会全体で共有・対話していくことで、苦しみを和らげながら新たな共有や共創を生んでいかなければならないことを示唆しています。
取材・編集した中村奈桜子ディレクターは、家族だけでなく社会全体で子育てをしていくことの重要性を訴えていました。

様々な出生の仕方を社会が受け入れていくことが重要ですが、ただ「みんなで助け合って頑張りましょう」ということに留まらず、しっかり社会の仕組みとして作り上げていくことが重要です。

母子手帳

子育ての仕組みとして様々な政策などがありますが。日本には昔からとても良いシステムがあります。「母子手帳」です。

1942年、妊産婦の健康管理を基本にした「妊産婦手帳」制度、子どもの健康記録のための「乳幼児体力手帳」制度がほぼ同時に始まりました。別々だったこれらを1948年にまとめたのが「母子手帳」です。母親と子どもの健康を一緒に見るという考え方は世界で初めてだったそうです。戦後すぐの頃は物資が少なく、乳児に必要なものを優先的にもらえる証明書という意味も兼ねて広まったとも言えます。

母親の健康と子どもの健康

妊娠中から母親の健康と生まれた子どもの健康の記録を1冊で管理できる仕組みは、画期的だったそうです。医療情報を家庭で管理できる公式の仕組みも、意外と少ないのですが、母子手帳は日本の乳児死亡率の低下にも大きな役割を果たしたと言えます。

前半は主に健康の記録で、全国共通の内容になっています。最近は、妊娠中に妊婦が自分の体調等を記入するページが増えたそうです。日々変わる自分の体調を記述していくことで、出産への心構えや準備ができるという考え方だそうです。
母親・父親の育児不安をサポートするための情報もあります。なんと、うんちの色をチェックできるページもあるそうです。昔から最も重要なのが、予防接種の記録です。感染症の予防に加え、大人になってからの記録にもなります。子供の健康診断の記録の他に、保護者による記録の欄もあります。病気の早期発見につながる項目もあります。誰でも、どこでも、切れ目のない医療を受けられるようにするのが、母子健康手帳の目的だそうです。ですので、日本にいる外国人の親子のために、9言語での母子健康手帳も配付されています。

手帳の後半は、コンパクトにまとまった育児の「教科書」のようになっていて、食事や応急処置、支援や相談先についての情報もあり、また「かかった病気の記録」「歯の治療の履歴」「アレルギーの症状」などさまざまな記録帳にもなっており、貴重な媒体です。
さまざまな子どもに合わせた手帳も作られはじめています。低出生体重児向けの「リトルベビーハンドブック」や、ダウン症、心臓病の子どもなど、様々な配慮が必要な親子向けの手帳を発行している支援団体もあります。
子育てをするのは母親だけではないという考えから、「親子健康手帳」「父子手帳」「祖父母手帳」もようやく広まりつつあるそうです。

汐見稔幸、田中千穂子、土谷みち子著『父子手帖 PartII 乳幼児――お父さんになったあなたへ』大月書店

母子健康手帳は、とても有効な仕組みで、アジア・アフリカの50以上の国と地域で導入されています。日本の母子健康手帳の実績が、妊産婦死亡率・乳児死亡率の低下につながっているからです。
子育てに不安や戸惑いを感じるのは当然のことですが、ひとりで抱え込むのではなく社会で共有していこうということが大切で、それを具体化する仕組みが母子手帳だと言えます。

母子手帳に代表されるような、社会の仕組みと媒体を考えていくことが重要であると思います。

中村安秀『海をわたった母子手帳――かけがえのない命をまもるパスポート』旬報社

リーガル・デザイン・ディクショナリー

児童福祉法
児童の権利を保護する福祉三法(福祉六法)の1つで1947年に公布されました。母子手帳制定の根拠となる法律で、現在でも、2012年の改正を根拠に、保育所等訪問支援、放課後等デイサービスが展開されるなど見直しが進められています。(e-Gov法令検索、https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000164

セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR: 性と生殖に関する健康と権利)
セクシュアル(性)やリプロダクティブ(生殖)のあり方について、心身ともに満たされ(ヘルス)、自由に選び取ることができること(ライツ)。大事なのは、産みたい人の気持ちも産みたくない人の気持ちも尊重し、いつ産むかについても自分自身で決められるようにするということです。(JOICFP、https://www.joicfp.or.jp/jpn/know/about_srhr/

母子保健法
1965年に制定された母子に関する知識の普及などについて定めた法律で、母子手帳や母子保健センターの根拠となっています。また、同法18条では低出生体重児を届け出ることになっています。(e-Gov法令検索、https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340AC0000000141_20220622_504AC1000000077

母体保護法旧優生保護法)
ナチス・ドイツの法律をモデルにした国民優生法(1940年制定)を踏襲して1948年に制定され、1996年に廃止された法律です。母体保護だけでなく、強制不妊手術や人工妊娠中絶など優生思想的な政策が定められていましたが、これらの障害者差別に当たる部分が削除され、母体保護法に改正されました。こうした歴史もSRHRの観点から見直していく必要があります。(NHK福祉情報サイト「ハートネット」、https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/53/

一般社団法人 日本記念日協会https://www.kinenbi.gr.jp/

国民体力法
戦時中の1942年、未成年者の体力を向上し、結核を予防するために制定され、「乳幼児体力手帳」制度の根拠となりました。1954年に廃止されました。(文部科学省、https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1318116.htm

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