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DIDI.Newsletter(2021年9月公開)

2021.9.15

今号ではソーシャルアートラボより「半農半アート」を基盤とした地域づくりの仕組みのプロジェクトを紹介いたします。

(DIDI News Letterは、社会包摂デザイン・イニシアティブ(DIDI)内の研究活動を発信するニュースレターです。DIDIを構成するソーシャルアートラボ、シビックデザインラボ、デザインシンクタンクが取り組む各プロジェクトの研究や活動を、インタビュー/レポート記事にて届けていきます。)

Project:「半農半アート」を基盤とした地域づくりの仕組み【ソーシャルアートラボ】

(参考)2018年度「奥八女芸農学校」より

ソーシャルアートラボでは、2015年度の設立当初から活動事業の一つとして、福岡県八女市黒木町笠原地区(奥八女)にて認定NPO法人山村塾と協働したプロジェクトを行ってきました(詳細はこちら)。「これまで6年間やってきたことを、今後、DIDIの枠組みの中でさらに発展させる挑戦をしていきたい」と本プロジェクト担当教員の長津結一郎先生は話します。

「研究的に活動からモデルを生み出したり、活動を通じて提言につなげたり、具体的に大学のカリキュラムにつなげたりするなど、これまでの蓄積をふまえながら将来の着地点をつくっていくことを目標にしています」と長津先生。

同じく本プロジェクト担当教員の朝廣和夫先生は、「これまでよりもさらに農とアートの関係性のリサーチを深め、他の事例を学んでいくことで、『半農半アート』の位置づけを考えていきたい」と話します。

「例えば、農業をしながらアートをやっている方もおられるし、アーティストが農業を始めたというケースもあるでしょう。また、地域のお祭りや芸能、工芸や民芸まで広く捉えるといろいろな事例が出てくるかもしれません。そのような視野の広がりの中で、『半農半アート』とはどういうものか、どういう広がりがあるか、どういう考えをもって取り組んでいる人たちがいるのか、そういう定義のようなものを活字化、言語化していればと思っています」。

(参考)2019年度「奥八女芸農学校」より
2019年8月28日未明に起こった豪雨災害の状況から、予定の作業を変更し、棚田の水路の復旧活動を行いました。

ソーシャルアートラボは2018年度より、3年間にわたって文化庁「大学における文化芸術推進事業」の助成を受けて、アートマネジメント人材育成を意識してのプログラムを構築してきました。

「今年度からはその括りがなくなるので、より本質的に『半農半アート』が示していることを、研究的な目線で捉えていこうというスタンスです」と長津先生。「この6年間で行ってきた実践の言語を、研究の言語として翻訳していけるのではという期待はありますし、そのような言語になった段階で、ソーシャルアートラボのほかのプロジェクトや、またシビックデザインラボのプロジェクトとの接点が見出せていければと思います」と、DIDI内での活動についての展望を語ってくれました。

(参考)2020年度「奥八女芸農学校」より
《八女茶山おどり》を体験する発表会の様子
朝廣 和夫 先生
長津 結一郎 先生

朝廣先生も「今回、DIDIとして枠組みが広がり、よりテーマの広がりというか、より新たな、違う側面からのアプローチが生まれてくるんではないでしょうか」と期待を寄せます。「それぞれ違った分野で活動しながら、その活動を共有していくことで、対話が生まれると思います。DIDIを形骸化させずに実質あるものとして育てていくために、DIDI内での対話、そして外部の皆さんとの対話をどう進めていくのかがさらに重要だなと思います」。

本プロジェクトでは、以下のような活動計画が立てられています。

○実践… 引き続き山村塾と協働し、奥八女芸農プロジェクトを実施します。山村塾が主体となり、ソーシャルアートラボは主にアート部分のアドバイスやサポートを行います。同時に同活動についての調査を行い、今後の活動に生かしていきます。

○研究… 学術研究員を配置し、他の「半農半アート」の事例の収集やインタビューを行い、全国の事例の類型化や、それに通じるモデル化を行っていきます。その研究成果を生かす形で、研究会やフォーラムも実施します。

○教育… 今年度は冬学期に臨時開設科目として学生向けの授業を行います。奥八女の現地を実際に訪れる体験型の授業を計画中です。

▶︎2021年度創造農村デザイン演習(学部)・創造農村デザイン応用演習(学府)として実施しました。報告書はコチラ◀︎

○執筆… 担当教員の朝廣和夫先生と、東北学院大学の齊藤康則先生の共同執筆により、災害が発生した後、農業ボランティアがどのように各地で活動をしているのか、また、今後その活動をどう仕組み化していけるかを活字化していきます。

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