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DIDI.Newsletter(2021年8月公開)

2021.8.15

今号ではシビックデザインラボよりジェンダー/LGBTsのデザインのプロジェクトを紹介。2021年9月30日まで作品募集中の「写真とことば」ジェンダーデザインコンテストについてのご案内もいたします。

(DIDI News Letterは、社会包摂デザイン・イニシアティブ(DIDI)内の研究活動を発信するニュースレターです。DIDIを構成するソーシャルアートラボ、シビックデザインラボ、デザインシンクタンクが取り組む各プロジェクトの研究や活動を、インタビュー/レポート記事にて届けていきます。)

Project:ジェンダー/LGBTsのデザイン【シビックデザインラボ】

「ジェンダー展 in 中央図書館」より
尾方 義人 教授

本プロジェクトでは、ジェンダー/LGBTsに関わるデザインの表現を通じて、様々な課題の意味合いを伝えていくことを目的にしています。「多くの場面でジェンダー/LGBTsは課題視されていますが、デザインする対象としてどうなのか、というのは私たちも含めてまだはっきりしていません」と本プロジェクト担当教員の尾方義人教授。「そのことについて、本プロジェクトで実践していきながら考えていきたいと思っています。こうあるべきだという啓蒙的にではなく、いろいろな表現を通じてジェンダー/LGBTsにおける様々な課題を伝えていければ」と話します。

具体的な取り組みとして、解決するデザインではなく表現するデザインとしての展覧会をいろいろな切り口で見せていくシリーズ展と、ジェンダー平等について考えるきっかけをつくるデザインコンテストが現在、進行中です。

●「ジェンダー展 in 中央図書館」

九州大学附属図書館との共催により、2021年6月23日(水)〜 7月15日(木)に九州大学中央図書館(伊都キャンパス)にて、展覧会「ジェンダー展 in 中央図書館」を開催しました。

本展は、大橋キャンパスにて開催した2つの展覧会「ことばとジェンダー展」(2020年9月30日〜10月7日)と、「ファッションとジェンダー展」(2021年2月18日、19日、22日)をもとに、多数の関連書籍を加えて再編集したものです。「ことば」と「ファッション」をテーマにジェンダー表現された作品を通して、ふだん使われている言葉や身につけるものについてジェンダーの観点から見つめ直す、問い直すことを提案する形で展開されました。

3階エントランスでは「ファッション」がテーマの作品が展示されました。

3階エントランス展示風景
《解体》
何がレディースをレディースらしく、何がメンズをメンズらしくしているのだろう」(作品キャプションより)

本作では、部分的に解体した服によってその疑問を投げかけています。
《理想と現実》
「ショップなどでみかけるトルソーはいったい誰の形なのでしょうか。「あの形」は、理想の形。現実の私たちは、もっと多様だ。」(作品キャプションより)
《現代のコルセット》
拘束するものの象徴としてヒールやネクタイなどを展示。
《フェミニン・スペクトラム》
シンプルなTシャツに少しずつフリルを足していき、フリルと女性らしさの関係を検証。
本展担当教員の尾方教授、中村美亜准教授らの推薦による関連書籍も展示。これらの書籍は閲覧だけでなく貸出もされました。
《ジェンダーかるた》
上の句、下の句がセットのカルタ。「スイーツ」「男子」、「リケ」「ジョ」など、世間が「男子」「女子」に当てはめる言葉が綴られています。
《漢字とジェンダー》《役割語とジェンダー》
《鏡の国のジェンダー》《ことばとジェンダー》
ジェンダーにまつわる様々な言葉や文字を集めたインスタレーション作品です。

本展は芸術工学部の学生を中心に企画されました。「昨年9月に大橋キャンパスで最初の展示を行った際は、特に社会包摂がテーマというわけではありませんでしたが、振り返ってみると芸術工学部ではジェンダーの研究をしている先生や、ジェンダーに興味をもっている学生はもともと多かったように感じます」と尾方教授。「最初の展覧会でも、いわゆる建築でも工業製品でもグラフィックでもない展覧会にどれほど学生が興味をもつかなと思っていたんですが、準備段階からやりたいという学生が増えていき、なるほど、ジェンダーが研究デザインの対象となる土壌はすでにあったんだなと感じたのを覚えています」と話します。ジェンダー/LGBTsのデザインとして手応えを感じた2つの展覧会を組み合わせて再構築し、また場所も中央図書館に変えて展示した本展は、さらに多くの学生や教授に興味をもってもらえる機会となりました。

本プロジェクトではシリーズ展として今後、「色とジェンダー」をテーマとする展覧会も行う予定です。どうぞ、お楽しみに。

●「写真とことば」ジェンダーデザインコンテスト

本プロジェクトでは、福岡市男女共同参画センター・アミカスと連携して、学生を含めた一般公募による「写真とことば」ジェンダーデザインコンテストを開催します。

前述の「ジェンダー展 in 中央図書館」で反響を得たことをふまえ、さらにパイを大きく、かつハードルを下げた形でジェンダーデザインを広げる方法として、本コンテストは企画されました。

企画当初はポスター展という案も出たそうですが、ポスターでの表現にするとスキルのハードルが上がってしまいます。浅く広く、多くの人に興味をもって参加してもらえるよう『写真』と『言葉』で表現してもらうという形にしたといいます。

また、イベントやお祭り的な一過性のものではなく、応募者には前段階で授業を受けてもらう、終了後も福岡市との関係をつなげていくなど、長期的なことも視野に入れられています。また、複数の視点や幅広い気づきをもってもらいたいと応募点数の制限を設けてなく、1人何点でも応募することができます。

応募締め切りは2021年9月30日(木)です。1次審査を経て、11月3日(水・祝)に公開審査を行い受賞者が決定されます。応募作品は、福岡市男女共同参画センター・アミカスでの展示を予定しています。ふるってご応募ください。

▶︎2022年度DIDI年次報告書①「ジェンダー/LGBTsのデザイン」
▶︎2022年度DIDI年次報告書②「リーガルデザイン」
▶︎2022年度DIDI年次報告書③「社会包摂とデザイン(授業)」
▶︎2022年度DIDI年次報告書④「公開講座」
▶︎2021年度「写真とことば」ジェンダーデザイン・コンテスト(福岡市と共催) 報告はこちら◀︎

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