Project

自然の循環と協働体の再生のためのアート実践の仕組み — 物語からのアプローチ

2023.4.27

アートパフォーマンス《共生 -tomoiki-》口羽雅晴 2020年 共星の里 黒川INN美術館(福岡県朝倉市)にて

近年の自然災害の苛烈化や疫病の蔓延によって、社会的繋がりの分断や孤立が進んでいます。本研究チームはこれまで、自然災害による被災者の心のレジリエンスを回復するため、被災木によるアート作品の制作や植物の循環を再生するための復興ガーデン制作などを行ってきました。本研究では、アートによる精神的で能動的な現実経験を「物語」として位置づけ、感性による自他理解を深め経験能力の限界を広げることが、意識の繋がりを再生すると仮定します。アートを通した協働が、どのような「物語」を創造し共有・伝達されていくのかというプロセスを、フィールドワークや質的評価等を行いながら検証することで、その仕組みを明らかにします。また、このようなアート実践を行うために必要な連携体制についても検討し、将来世代の社会教育に応用できる理論の構築を行っていきます。

黒川復興ガーデンプロジェクト 東屋セルフビルド 2020年 共星の里 黒川INN美術館(福岡県朝倉市)にて
撮影:長野聡史

活動

【彫刻「鬼杉不動」制作】

英彦山(福岡県)の巨木「鬼杉」(国指定天然記念物)の落枝(1991年台風被災によるもの)を利用して、2020年12月から2022年3月にかけて制作しました。

知足美加子教授によるレポート
http://elfinfukuoka.blog.jp/archives/88024546.html

報告書「英彦⼭修験道における⾃然信仰と森林⽂化再興のための⻤杉落枝と千本杉による不動明王像制作」
https://www.design.kyushu-u.ac.jp/~tomotari/OnisugiFudo.report.pdf

【アートガーデン「植物の一年時計」制作】

植物が1 年にわたり順に開花するようデザインしたアートガーデンを、九州大学伊都キャンパス内に制作しました。このアートガーデンは、九州北部豪雨災害(2017 年)の復興支援として制作した「黒川復興ガーデン」から発想を得ました。人々の心の中に自然の循環や時間への想像力を喚起し、現在の植生を将来世代に伝えるものとなるよう、九州大学にある「生物多様性保全ゾーン」に自生する在来種を中心に植栽しました。

知足美加子教授によるレポート
https://www.design.kyushu-u.ac.jp/~tomotari/SeasonalFlowerClock.html

【流域文化復興支援サイト「MILL(ミル)」制作】
福岡県朝倉市、東峰村、添田町は九州北部豪雨災害(2017 年)の被災地であり、また英彦山と筑後川を結ぶ「水」の恵みと「流域文化」を共有しています。
「MILL」は、この3地域をつなぐ復興支援サイトです。タイトルには英語の「水車小屋」という意味と、日本語の「みる」という響きを重ねています。水の恵みが、粒子のようにあまねく流域に広がること。よくみて、関心をもってもらうことを願って制作し、新しい記事も随時追加しています。
https://mill-triple.com/ ← コチラからアクセスできます。

【オンラインセミナー動画】
九州大学アジア・オセアニア研究教育機構主催 Brown Bag Seminar (2022年3月23日)「アートと共生社会 ー心のいのちを養い、分断をつなぐー」

参加メンバー

  • 知足 美加子 社会包摂デザイン・イニシアティブ 教員
  • 安藤 邦廣  里山建築研究所、筑波大学 名誉教授(建築)
  • 杉岡 世邦  杉岡製材所、九州大学大学院博士後期課程(建築)
  • 栗山 斉  九州大学大学院芸術工学研究院 准教授(芸術)
  • 佐藤 宣子  九州大学大学院農学研究院 教授(森林環境科学)
  • 藤原 敬大  九州大学大学院農学研究院 准教授(森林環境科学)
  • 渡辺 淳史  九州大学大学院農学研究院 准教授(森林環境科学)
  • 清水 義邦  九州大学大学院農学研究院 准教授(サスティナブル資源科学)
  • 岸村 顕広  九州大学大学院工学研究院 准教授(応用化学)
  • 安田 仁奈 東京大学 教授(水域保全学)
  • 矢原 徹一 九州大学 名誉教授(植物学)
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