Archive

/ 2020.10.21

2020年10月3日【概要】九州大学「LGBTs サポートガイド」発行記念シンポジウム/ 第3回社会包摂デザイン研究会「LGBTsと包摂型社会のためのデザイン」

九州大学では、2020年7月に公式「LGBTsサポートガイド」が発行されました。芸術工学研究院では、これを記念し、10月3日(土)にオンラインシンポジウム「LGBTsと包摂型社会のためのデザイン—大学・職場・社会に新たな価値を創造する」を開催いたしました。当日は、学外からの方も多く、スタッフを含めて86名の参加がありました。

パネリストには、国公立大学で最もダイバーシティについて取り組んでいるといわれる筑波大学の五十嵐浩也先生。LGBTsの活動が盛んで芸術に造詣の深い方も多く、革新的な企業活動を通した社会貢献をしているアクセンチュア株式会社の佐藤守氏。学生に近い世代の方で「多様な生と性」について発信をされているNPO職員の中島潤氏。シンポジウム前半では、新たな価値の創造を通じて課題解決の取組みをされている3名の方にお話を伺いました。

五十嵐先生からは、筑波大学DACセンター策定について、学生・教職員対象の「LGBT等に関する筑波大学の基本理念とガイドライン」のご紹介や、全学的な対応になるまでの経緯をお話し頂きました。また後半はダイバーシティ・サイエンスやインクルージョン・テクノロジーの考え方、トランスクリエーション・デザインの必要性についてお話し頂き、ダイバーシティやインクルージョンを考えるときデザインは一つの重要な方法論であり、考え方であることを教えて頂きました。

佐藤氏からお話し頂いたのは、アクセンチュア社内のインクルージョン&ダイバーシティの活動の中で推進されているLGBTQ Ally Networkや、日本のLGBTQコミュニティセンター「プライドハウス東京レガシー」の立ち上げについて。「プライドハウス東京レガシー」のミッションステートメント、コミュニティとしてのコンセプト、組織体系・運営の事業モデルデザインについて、デザインシンキングを活用し、約40団体の参加者とともに構築していったプロセスを具体的にご紹介頂きました。

中島氏からは、私たちが普段目にするデザインが私たちの認知にどのように関わっているか、お話し頂きました。保育園や会社で日常的に目にする、履歴書や会社の受付、絵本、駅のトイレ案内板を事例に、そのデザインから読み取れるメッセージについて解説されました。「私たちは日常をデザインの中で過ごしていて、それらのデザインが『あたりまえ』をかたちづくっている。だとすれば、『あたりまえ』をデザインで解きほぐすことができるかもしれない。」と気づきのきっかけを頂きました。

シンポジウム後半は、九州大学のLGBTQ当事者が運営するサークルarcusのメンバーの発表からスタートしました。当事者の居場所づくりや交流会などの活動や、困りごと、普段思っていることについて紹介がありました。メンバーから提供された、敬称の使い分けや授業中・医療の場であった差別発言、相談すること自体のハードルの高さ等の課題に対し、パネリストからも解決のヒントを頂きました。その後、パネリストとモデレーターによるクロストークに移り、参加者からの質問も活発に行われました。オンラインの特性を生かしたチャットでの質問も多く集まり、盛況のうちに閉会となりました。

今後も社会包摂デザイン研究会について継続していく予定です。また本シンポジウムの内容について簡単な報告書をまとめ、Archivesでもご紹介しております。

▶︎本シンポジウムの報告書はこちら◀︎

●概要
九州大学「LGBTs サポートガイド」発行記念シンポジウム/第3回社会包摂デザイン研究会「LGBTs と包摂型社会のためのデザイン。」

[開催日時]2020 年10 月3 日( 土) 14:00 ~ 17:00(開場13:45 ~)

[プログラム]
14:00 開会 諸連絡
14:05 開会の挨拶 谷 正和(九州大学大学院芸術工学研究院研究院長・九州大学副学長)
14:15 趣旨説明
・社会包摂の考え方とLGBTs の考え方
・課題解決への新しいアプローチ
・アンケート結果紹介
14:25 講演1 五十嵐 浩也「Design vs. Diversity」
14:45 講演2 佐藤 守「LGBTQ コミュニティセンター立上げとデザインアプローチ」
15:05 講演3 中島 潤「私たちの「日常風景」とデザイン~「あたりまえ」を解きほぐす」
15:25 休憩
15:35 九州大学セクマイサークル arcus(あるくす)のメンバーからのコメント
15:45 登壇者+モデレータークロストーク
16:50 今後の計画 について、 アンケート
16:55 閉会の挨拶 村木 里志(九州大学大学院芸術工学研究院副研究院長)

[パネリスト]
五十嵐 浩也 Hiroya Igarashi
筑波大学特命教授(DACセンター顧問・アントレプレナー教育担当)
大学(理工学部・機械工学科)卒業後、GKインダストリアルデザイン研究所、富士ゼロックスデザイン研究所を経て、筑波技術短期大学、筑波大学芸術系教授。ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター長・筑波大学執行役員ののち、現職。

佐藤 守 Mamoru Sato
アクセンチュア株式会社 インタラクティブ本部 シニア・マネジャー
現職においては、デジタル時代の事業戦略策定、新規事業・サービス立上げ、組織設計・変革推進、マーケティング業務改革といったプロジェクトをリード。アクセンチュア・ジャパンにおけるLGBTQ Allyネットワークリードを担当し、社内外のAllyおよび当事者向け施策立案・推進に従事。アクセンチュア芸術部の企画プロデューサーであり、『(デザイン+アート) x ビジネス x テクノロジー領域』について、アクセンチュアで有数の見識を持つ。

中島 潤 Jun Nakajima
性の多様性発信者(パラレルワーカー:NPO職員、研修講師等)
福岡県生まれ、大学在学中より、関東にて性の多様性をテーマにした発信活動を開始。民間企業勤務を経て、大学院にて社会学を専攻、修士(社会学)。現在は、複数の仕事のひとつとして、各地の行政や学校、企業にて、「多様な生き方、多様な性のあり方」をテーマにした発信活動を続けている。性のあり方は誰にとっても人権であり、自分らしく生きるための大切な要素だと考え、特に子どもたちへの発信と教育に関心を持っている。

[モデレーター]
中村 美亜、尾方 義人(九州大学大学院芸術工学研究院)

[主催]
九州大学大学院芸術工学研究院 社会包摂デザイン・イニシアティブ準備室

[後援]
九州大学キャンパスライフ・健康支援センター九州大学 男女共同参画推進室九州大学ソーシャルアートラボ九州大学芸術工学部 未来構想デザインコース

page top >