Project

未来の児童養護施設のデザイン

2023.5.31

埼玉県加須市の児童養護施設「光の子どもの家」を舞台として、「未来の児童養護施設は、どのような形が望ましいのか」について、子どもたち、施設職員、地域住民など様々な関係者との対話ワークショップを通して考えるプロジェクトです。未来の児童養護施設のデザインを建築設計の観点から考える上で、建築の専門家でない人たちも一緒に対話しながら進める「参加型の設計デザイン」を目指します。そのために、どのような対話ワークショップが参加しやすいのか、また、参加者が声をあげやすいのか、ワークショップのあり方についても実践を通して研究していきます。

「光の子どもの家」は1985年(昭和60年)、当時としてはまだ少なかった小規模施設として設立されました。地元では建設反対運動が町長選挙の争点になるまでに拡大し、入所してきた子どもの住民登録を町側が拒否しました。しかしながら、全国的に人権侵害問題として大きく報道されたことが大きく影響し、町は条件付きで施設を受け入れるに至りました。

この「光の子どもの家」を舞台に、刀川和也監督が2003年~2011年の8年間をかけて撮影・制作したのが、ドキュメンタリー映画 『隣る人』(http://www.tonaru-hito.com/)です。

映画フライヤー画像提供:刀川和也氏(『隣る人』上映事務局、本作監督)

この映画は、「脱施設」に否定的であった厚生労働省の方針を大きく転換させるきっかけとなり、地域化・分散化・小規模化という児童養護施設計画に多大な影響を与えました。本作からは「本当の意味で子どもたちのための、子どもたちの施設をつくろう」という理念が実践に移される過渡期の様子が窺えるとともに、家庭的な環境で子どもたちと一緒に暮らすという当たり前であるべきことが実際は非常に難しいということが深く理解できます。

画像提供:刀川和也氏(『隣る人』上映事務局、本作監督)

現在、その「光の子どもの家」も老朽化し、物理的な改修や建替えを検討する時期に差し掛かっています。地域化・分散化・小規模化という理念を実現させるためには、職員の超過労働など、運営や空間に関する新たな問題にも向き合う必要があります。そのために、DIDI や学内の専門の教員らと協働し、施設・空間を検討することを目的としたデザインワークショップを企画し、共に場を生み出す者として包摂的に関われる雰囲気が自然に生まれるような、施設の運営の方針や改修・改築デザインの方針を明確化していきます。


◆ 活動内容計画

映画『隣る人』上映&刀川和也監督トークセッション

・「光の子どもの家」でのワークショップ

・調査、デザイン提案

参加メンバー

田上健一 社会包摂デザイン・イニシアティブ 教員

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