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時評:失格判定と入国審査

2023.6.12

先週(2023年6月)また仕組みのデザインとして気なる事柄がありました。
社会包摂デザインのアプローチで仕組みやルールから読んでいきます。


全仏オープン女子ダブルスでの失格判定


ボールガール(最近はボールパーソンやボールキッズといった表現)
1870年代 社交界でテニスが親しまれていた時代、正装で屈みづらかったため、ボールを拾うのは少年の役割であったとか。屈みづらい服装でスポーツとかよくわからない感じもしますが、当時の社交界の優雅な雰囲気がわかると思います。当時女子は紅茶の用意など、ボールに触れない手伝いをしていたそうです。
1977年になり男女の違いなく、平等に選ばれた少年少女たちが、ボールボーイ・ボールガールと選ばれているそうです。
選出方法は国によって異なるようですが、基礎知識などを学ぶプログラムを修了すると、応募資格を経て、テニススクールなどから推薦されるそうです。今回の全仏OPでは「身長175cm未満」「視力が良い」「フランステニス連盟会員である」なども条件です。その後、大会ごとでまた審査があるようです。およそ15歳だそうです。

ルールブック
今回の警告は以下に基づいたもののようです。
『グランドスラム公式ルールブック』 https://www.itftennis.com/media/5986/grand-slam-rulebook-2023-f.pdf

N ボールの乱用
選手は、試合中(ウォームアップを含む)に合理的にポイントを追求する場合を除き、大会会場の範囲内で、暴力的、危険、または怒りをもってテニスボールを叩いたり、蹴ったり、投げてはならない。
本条に違反した場合、プレーヤーは、1回の違反につき20,000ドル以下の罰金を科される。また、この違反が試合中(ウォームアップを含む)に発生した場合、プレーヤーは以下に定めるポイントペナルティスケジュールに従って処罰されるものとする。
本規則において、ボールの乱用とは、意図的にコートの囲いの外にボールを打つこと、コート内で危険または無謀にボールを打つこと、または結果を軽視してボールを打つことと定義される。

N. ABUSE OF BALLS
Players shall not violently, dangerously or with anger hit, kick or throw a tennis ball within the precincts of the tournament site except in the reasonable pursuit of a point during a match (including warm-up).
Violation of this Section shall subject a player to fine up to $20,000 for each violation. In addition, if such violation occurs during a match (including the warm- up) the player shall be penalised in accordance with the Point Penalty Schedule hereinafter set forth.
For the purposes of this Rule, abuse of balls is defined as intentionally hitting a ball out of the enclosure of the court, hitting a ball dangerously or recklessly within the court or hitting a ball with negligent disregard of the consequences.

失格
https://ja.wikipedia.org/wiki/失格
には

スポーツ(Disqualifiedの略としてD Q. またはDSQと記されることがある)をはじめ、実に広い範囲の競技で(あるいは比喩的にも)使われる。「欠格」とほぼ同義に使用されることもあるが、厳密に言うと「欠格」とは最初から資格が無いことを言うのに対し、「失格」は持っていた資格を剥奪されることを意味する。


とあります。

バドミントンでは、
「失格は競技役員長(レフェリー)によって宣言される。同項(1)によると、失格が宣言される前には必ず警告とフォルト(失点)という2つの段階を経なければならない。」
とあります。

決断を下す仕組み
全仏ではどのようなものかわかりませんが、日本国内のルールでは警告(いわゆるイエローカード)3回で失格(レッドカード)となるようです。こういったことを記録するために採点票というのがあるようです。ルールや判断が生じる場合は記述や記録が重要になります。

更に今回は主審から、スーパーバイザー、レフェリーに相談がいき、レフェリーが事前情報は一切ない状態で現場で聞き取りし、状況を分析し、その場の判断で「警告」から「失格」に変えたということです。
『危険もしくは無謀なボールをコート内に故意に打つ、もしくは、不注意に打ったボールが深刻な事態を招いた場合』に照らし合わせたということです。

ルールブックはすべての事例を網羅しているわけではないので、それに基づき、判断の能力があるとされている権限のある人が最終判断を行う仕組みが重要になってくるのでしょう。ただしVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)は利用されなかったようです。

運営者の判断というルール
失格した選手は同じ大会の他種目でプレーできない可能性があったが、運営側の判断で出場が許可されたそうです。運営側の判断という、ルールにはないコミュニケーションが生じたわけです。

不服申立て
スポーツに限らず、ルールがあり、それを判断のために適応する必要があるとき、ほとんどの場合で不服や異議を申し立てる仕組みがあります。社会的に納得感を持ってもらったり、間違いをなくすことなどを担保するための仕組みと思っています。

ランキング ポイント 
最近ではほとんどのスポーツで、ランキングを示すために大会や順位によってポイントを算出して総合点方式で決めているようです。シード権などにも影響するため、ポイントがどれだけ手に入るかは選手にとって大変重要な問題です。


出入国管理及び難民認定法の改定


入国管理については、以前 掲載したコラム
入国とは/船舶観光上陸許可制度/出入国管理の目的/戦前の警察の取締活動/旅券と査証/在留資格/難民/名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案/外国人との共生社会の実現のための有識者会議
https://www.didi.design.kyushu-u.ac.jp/column_18/
で、様々な問題点に触れています。


今回改定案が出された法律の改定箇所は
“ 難民認定三回目以降の申請者は強制送還を可能にする ”

「難民認定申請中は強制送還が停止される」という現行の規定があり、また申請に上限を設けていないことから難民認定申請を繰り返すことで送還から逃れようとするケースがあるとして、これを三回目の難民申請以降は「難民認定すべき相当の理由」を示さなければ送還とします。

その他の改正案

• 退去するまでの間は施設に収容するとしていた原則を改め、入管が認めた「監理人」と呼ばれる親族や支援者らの元で生活ができるようにする

• 入管施設への収容継続の必要性を3カ月ごとに判断する

• 送還に必要な旅券の申請を命じられて拒否したり、送還の航空機内で暴れたりした場合の刑事罰を新設する

• 条約上の難民には該当しないが保護すべき避難(ウクライナ避難民など)を、準難民として認定する「補完的保護対象者」制度を創設する

• 難民認定が適正に行われるよう、専門的な職員を育成する

改定箇所以前に、そもそも難民認定手続きがどのようなものか理解しておかなければなりません。
https://nanmim-bond.amebaownd.com/posts/3002771/

難民審査参与員

重要なものが「難民審査参与員」のかたの仕事です。
https://www.moj.go.jp/isa/content/930003160.pdf では、

「法務大臣は,3人の難民審査参与員の意見を聴いて裁決」
とありますが、実質は難民審査参与員が決めているのだと思います。

また
「※あらかじめ3人の難民審査参与員で構成される班を複数設置」
とあります。おそらくこの運営方法自体は法律の範囲ではないので、出入国在留管理庁の判断で決めているのではないでしょうか。

ですので、一部の方が一人で1年間に1378件、1日あたり平均40件を審査するという極端かつ不自然な事実になるのだと思います。こういった割り振りの目的はわかりませんが、不自然であることは間違いないので、良からぬ意図があると普通の人間は想像してしまいます。

https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=252412&pid=1027263


失格判定は、判断結果に賛否はあるかもしれませんが、判断プロセスが明確です。入国審査はプロセスが示されているのですが、その運用が明確でないため何か隠しているのではなかろうかと不安を感じてしまいます。

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