社会包摂デザイン・イニシアティブ(DIDI)では、不定期で「社会包摂デザイン研究会」を開催し、「社会包摂デザイン」の方向性を様々な角度から検討しています。第2回では、司会進行の長津結一郎先生から、日常生活における「配慮」の多義性についての問題提起を受け、一般社団法人hare to ke lab代表理事の梶原慶子さん、芸術工学研究院の須長正治先生(色彩・視覚科学)、高田正幸先生(音響デザイン学、音響環境学)、増田展大先生(映像メディア論、視覚文化論)にご登壇頂き、「配慮」について議論しました。対面とオンラインを同時に行うハイブリッド開催で、36名の方にご参加頂きました。
梶原慶子さん「行政からみる〈配慮〉」
福岡市役所で「Fukuoka Art Next」などのアート事業を担当しながら、一般社団法人hare to ke labの代表理事を務める梶原さん。そんな梶原さんは、サービスの「冗長性」を行政の制度に組み込むことが配慮において重要だという視座を提示しました。冗長性は、一般的には縦割りの役割分担で生まれる無駄な重複と理解されますが、それを徹底的に排除し、合理化するならば、制度の網の目から零れ落ちる問題も増えるのだと言います。例えば、児童養護施設の退所時期が一律18歳とされてきたように、制度は固定的な線引きを伴いますが、ICF(国際生活機能分類モデル)が提唱するように、当事者の直面する困難の要因はケースバイケースだと考えられます。人口減少・経済停滞により公助の拡大が期待できない状況で、「互助」や「自助」の果たす役割が大きくなることを意識した取組みが必要とされているが、こうした多様性に対応する上では、それを階層的に統合するのではなく、さまざまな組織や機関が連携し、重層的な網の目をつくる視点も重要ではないかと問題提起しました。