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/ 2022.12.12

2022年度 第1回社会包摂デザイン勉強会 報告

2022年9月9日、国連権利委員会が、障害者権利条約に基づき、日本の障害者政策に関する初めての勧告を公表しましたが、様々な点の不十分さが厳しく指摘される結果となりました。この勧告を受け、社会包摂デザイン・イニシアティブ(DIDI)では、様々な分野を専門とする構成教員が情報や意見の交換を行うための勉強会を開催することにしました。発表を引き受けて下さったのは、色彩・視覚科学を専門とし、「九州大学らくちんラボ」で2色覚の方も利用できるキャンパスマップを開発するなど、バリアフリー環境の向上に携わってきた須長正治教授。その問題意識や経験談を受け、参加者との雑談を交えながら、多岐に渡る日本の障害者政策の課題を考えていきました。

前述の障害者権利条約のコアとなるのは、「合理的配慮」(reasonable accommodation)という考え方です。当事者の個別具体的なニーズに対し、支援する側に無理のない範囲で配慮を行うために、双方が対話を積み重ねることです。日本では2016年施行の改正障害者雇用促進法で公共サービス事業者に義務付けられ、これから施行される改正障害者差別解消法では民間事業者にも義務化されます。「らくちんラボ」では、合理的配慮を実施していくために、教員だけでなく専門家も交えながら、伊都キャンパスの夜間照明が薄暗く様々な利用者が不安を覚える、発達障害を持つ方々が一人になれる空間が無いなど、様々なニーズに耳を傾け、解決に取り組んでいると言います。

他方で、「合理的配慮」を含め、障害者権利条約の日本語訳は不適切な部分が多いと指摘されています。近年、障害の原因を病理的な要因に見出す「医学モデル(個人モデル)」に対し、社会的な環境が障害を生み出すと理解する「社会モデル」の重要性が指摘されてきました。

例えば、須長先生が関心を寄せてきた多様な色覚特性は、医療用語では「色覚異常」、メディアでは「色覚障害」と呼ばれ、特に男性ではかなりの頻度で見られるものだと言います。それにもかかわらず、検査や職業制限に関する法令はあるのに、配慮や支援に関する法令は存在しないそうです。いわば、社会環境の側を変化させる努力を怠り、少数派の色覚特性を「異常」として排除してしまっている現状があるのだと言えます。

このような現状で、「配慮」という表現には、医療モデルに基づき「障害者を、健常者中心の社会に適応させる」という旧来からの印象が依然として強く残されているという批判もある反面、自ら対話を求めることが難しい方々もいるのではないかという意見も見られました。

DIDIでは、今後もこうした勉強会を、不定期的ではありますが、継続的に開催し、様々な研究プロジェクトを架橋していく予定です。

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