Topics >

【横からすいません 番外編】 大学入学共通テストと社会包摂 速報版

2023.1.15

今年の大学入学共通テストの問題を社会包摂デザインから考えました。

本年度の大学入学共通テストが昨日・本日(1/14,15)行われました。共通テストのような仕組みは世界各国にあります。詳細は色々異なりますが、アメリカの「SAT」や「ACT」、ドイツの「アビトゥーア」、中国の「全国普通高等学校招生入学考試」(高考(ガオカオ))、韓国の「大学修学能力試験(スヌン)」などです。日本では、「共通テスト」の前は「センター試験」と呼ばれていました。その前は「共通一次」です。

もともと日本での近代的な教育制度は1872年(明治5年)の「学制発布」に始まります。学校制度や学校の種類や教育内容など様々な規定がありました。旧制高校入試の共通試験としては、1902年(明治 35年)に共通的な統一試験が行われました。

共通テストは、大学設置基準(昭和31年10月22日文部省令第28号)や独立行政法人大学入試センター法と大学入学共通テスト実施大綱(令和元年 6 月 4 日文部科学省高等教育局長通知 令和 2 年 1 月 29 日一部改正)に基づき実施されているようですが、そもそもなぜ入試をしているのかなど、仕組みのデザインとして見た時、なかなか複雑な気がします。そこは今後の宿題にします。

今日は、先程終わった本年度の共通テストの問題について少し紹介させてもらいます。

最近の特に文系科目の問題では、高校生の活動場面が問題の題材となったり、 大学のオープンキャンパスの模擬授業や高校の授業の “探究” など、生徒の学習活動の場面設定がされていることが多いです。応用的・発展的な思考力を求めているからだそうです。

今年の共通テストの問題を社会包摂デザイン・イニシアティブの立場から、少し眺めてみました。

演劇!?

英語では、“ 校外活動として鑑賞する演劇を選ぶために案内書を読む問題 ” が、

日本史Aでは、“ 高校生が「幕末から明治の日本」についての演劇の台本を作成する設定で出題 ” されたり、

現代社会では “ 演劇を見た高校生の会話や劇団の主宰者のインタビュー資料をもとに ” 考える問題など

がありました。演劇とパーソナリティや心理学研究との関係を示唆したり、演劇の産業としての課題の示唆があったり、答えとは直接は関係あるわけではないですが、このように問題の背景や文脈に演劇や劇場、コミュニケーションが使われることは、このようなことを重要視して活動している、ソーシャルアートラボや社会包摂デザイン・イニシアティブとしては、興味深く、単純にうれしい気持ちになります。

旅行・移動

世界史Aで「歴史上の移動や流通」「旅行経験と歴史の学び」 、

日本史Aで「旅から調べる近現代史 修学旅行」 、

地理Aで 「世界の特徴的な交通手段」など、

移動や旅行からの文脈の問題も見られました。

コロナで移動制限が大きかったこともあり、そのように感じているだけかもしれません。いずれにしろ歴史や地理では人々の移動がとても重要ということを感じました。

カントは「永遠平和のために」世界市民権として訪問権を示しました。「外国人が他国に足を踏み入れても、それだけの理由でその国の人間から敵意をもって扱われることはないという権利」です。この思想は、世界人権宣言や難民条約において適用されています。

移動や出入国管理については、コラム第18回「入国って、ドキドキするんです、、」でもお話しします。

他にも

格差

ネットでは親ガチャ問題などとも言われていますが、倫理、政経の「格差を是正するのは個人か社会か」 の問題

子どもの貧困

現代社会では「子どもの相対的貧困」について考察する問題

女性の参政権

世界史Bでは中国史における女性の参政権獲得について読解する問題

働き方 働く意味

英語のリスニングでは、働き方の時代的変化についての問題

戦争

国語、日本史A、倫理、政治・経済では、梅崎春生『飢えの季節』などを含め裁判や国際政治、戦争をどう伝えどう読んでいくかなどの様々な問題

など、様々社会的課題を通じた問題がありました。

高校生でなくても、答えがわからなくても、このような入試の問題文を読むことは様々な世代とのコミュ二ケーションとして、重要なツールのような気がします。

新聞やネットで問題を見ることができます。ぜひ一度眺めてみてくだい。

(参考サイト)
高校生新聞オンライン https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/9589

page top >