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/ 2022.7.4

スタジオプロジェクト(聴覚障害とコンサートのあり方を考える)の開講 

2022年の芸術工学府の改組に伴い、新しくスタジオプロジェクト科目が開講されました。 

本年は、尾本章教授、長津結一郎准教授が共同で「聴覚障害とコンサートのあり方を考える」という副題のもと、ホールマネジメントエンジニアリングプログラムを履修する学生を中心に授業が展開されています。授業では、聴覚に障害がある方とディスカッションをする機会があり、当事者のことを知り、グループで考えを深めながら企画を立てていくというプロセスをたどります。当事者の視点からインクルーシブな音楽鑑賞のあり方を考えていき、冬学期には実際にコンサートを行う予定です。 
(この企画は一般財団法人曽田豊二記念財団の支援により実施されています)

春学期のまとめとして、6月3日には、8つの班が冬学期に開催予定のコンサートの内容について、構想を発表しました。 

発表内容は以下の通り、実際にコンサートのコンテンツに関するものから、前提となる聴覚障害者に対するアンケートと多岐に渡りました。 

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<音楽を共有するためのライブ技術のアプローチ> 

聴覚障害の種類や程度を踏まえ、ワイヤレスモニターとバイノーラルやお手軽ボディソニック、ontennaなどを用いて、立体音響で臨場感を感じられるような取り組みを発表しました。 

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<障害に関係なく楽しめる体験を技術から考える> 

大橋キャンパスにある音響特殊棟を用いて、24chスピーカーアレイを用いた音場体験や、モールなどの小道具を用いての音楽を振動としての提供、障害に応じての音の調整などを考え発表しました。 

学生たちによる発表
学生の発表に対し、教員からの講評

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<震える> 

浮かせた板の上にスピーカーを置き、振動を感じる「島」を作成し、その上を移動しながら振動の感じ方を楽しむことを提案しました。音を捨て、振動でコンサートを成立させるという発想は、音が必要かを0から考えるきっかけとなりそうです。 

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<観客参加型音楽劇「桃太郎」> 

聞こえが厳しい人の中には、「音楽は好きだけど、楽しめているか自信がない」という事情があることや、音楽を好きになりやすい年代などを踏まえ、手話や楽器を用いて物語を一緒に進めて楽しめるプログラムを提案しました。 

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<聴覚障害のある人に対するコンサートにおける広報活動> 

五感に訴える広報を目指し、視覚的・触覚的アプローチを中心に検討し、聴覚障害のある人が多く集まるような場所も広報物を置く場所として紹介しました。また、コンサート本体のみならず、その前後で大橋エリアを楽しめるような取り組みを考え発表しました。 

学生の発表の後、教員による講評

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<嗅ぐの音楽> 

香りと色のスプレーを用いて、聞こえる・聞こえないを超えて、嗅覚を使って感覚を「共有」できる参加型ワークショップを提案しました。コンサートではみんなが集まって音楽を聞くことから着想を得て、匂いも同様に楽しめ、かつ音楽と同様に消えていくことを嗅覚を通じて感じてもらうことがコンセプトとなっています。 

発表の中で実際に匂いを嗅ぐ体験をしてもらう様子

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<聴覚障害のある人も楽しめるマーチングコンサート> 

音情報のない動画を見ることの難しさやリズムを見て楽しめることに着眼し、視覚的に楽しめるマーチングを取り上げ、学内の施設を用いながら、客席からの楽しみ方についても方法を考え提案しました。 

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<聴覚障害のある人とコンサートの楽しみ方に関する調査> 

他の班とは打って変わって、聴覚障害者に対してアンケート調査を行いました。その中で、「音は見えない何かで、聴者の世界で生まれたもの」という声が寄せられたことにふれ、「今後の参考にしてほしい。」と話しました。 
また、「今後は、企画を行う学生たちと聴覚障害者の間に立つ存在として活動を進めていきたい。」とも話しました。 

夏学期以降は、9月中旬の久留米シティプラザでのイベントへの出展や、学部融合プロジェクトとの協働、2月初頭にはコンサートが予定されています。 
学生それぞれが、各自の専門分野や興味を元に、協働しながら2月のイベントに向けてプロジェクトを進めています。
どんなコンサートになるのか、お楽しみに! 

【レポート:疋田弥紅(大学院芸術工学府芸術工学専攻音響設計コース修士1年)】

▶︎2021年度 尾本先生、長津先生の担当授業「ホールマネジメントエンジニアリングプロジェクトⅠ−Ⅳ」の報告書はこちら◀︎

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